先日、TABIPPOという団体が主催する「旅するように働き、旅するように生きる」というテーマのセミナーに参加してきました。
そこで出会った、旅好きの大学4年生。旅行会社への就職が決まり、4月からは旅行代理店の窓口で働くそうです。
セミナーの帰り道で一緒に話していると、「就職したら、長い連休も取れなくてなかなか旅に行けなくなっちゃいますよね…」とぼやいてました。
たしかに、一般的な会社に就職したら、何週間も連続した休暇が取れないのは事実。その物理的な制約から、長期間の旅行には出られない。悲しいですが、それは現実です。
では、彼がどうすれば旅と仕事を同時に楽しめる、充実した人生を送ることができるのか、少し考えてみました。
客を通じて、間接的に旅行を疑似体験する
残念ながら、仕事が始まったら長期の旅に出ることは当面難しいでしょう。
将来的には仕事として旅に出ることもできるかもしれませんが(これは後述します)、1~2年目では難しいでしょう。なので、自分が旅に出ずに、旅の素晴らしさを満喫する方法を考える必要があります。
その手っ取り早い方法は、旅の土産話を聞くことです。
それも、感慨深く「あそこで見たアレは、本当に素晴しかった…(しみじみ)」みたいなやつ(笑)
写真を見ながら、旅の土産話を聞いていると、なんとなく自分も行っているような気になりませんか?
…えぇ、もちろんその後は「自分も行きたい!」という気持ちになっちゃうんですけど、それはそれで仕事を頑張るモチベーションに繋いでいきましょう(笑)
客から素晴しい土産話を聞かせてもらうための方法
こんなこと書いておきながら、僕自身思ったのは「旅行から帰ってきた後、わざわざ旅行代理店の担当者に土産話をするか?」ということです。
契約や入金が済んだら、質問やトラブルがなければもう担当者と話す機会なんてありませんよね。
なので、旅行から帰ってきて落ち着いた頃を見計らって、「ご旅行はいかがでしたか?」と電話しましょう。
僕なら、「えっ…?あ、まぁ、おかげさまで楽しめましたよ、ハイ。(なんでこいつに話す必要があるんだ…?)」とか答えます。
…スミマセンm(__)m
そうならないために、必要なことはたった1つ。
客の期待を上回る提案をして、大満足してもらえる旅行にする
旅好きの知識を総動員して、最高の旅を一緒に考える!
では、客の期待を上回り、大満足してもらえる旅ってどんな旅でしょう?
それは、提案した時には「そんなこと、自分じゃ思いつきもしませんでした!そんな所があるんですか~!」とビックリされ、旅行後に電話すると「いや~、あそこは本当に素晴しかった!また行きたくなっちゃいましたよ(笑)」と興奮気味に話してくれるような旅です。
ここが旅好きの腕の見せ所であり、趣味を仕事にすることのクライマックスと言えます。
旅行代理店に来るお客さんの心理を考える
旅慣れしていれば、簡単にネット予約で安くプランが組めるこのご時世、わざわざ来店するということは、情報 or 決断力がないからです。
たとえば、「サイパンにダイビングに行きたい。宿と飛行機を取りたい。」「会社の慰安旅行で予算は1人5万円。いいプランを見繕って欲しい。」という風に、「旅行に行きたいけど、いい方法教えてよ」というレベルのことを聞きにきているわけです。
つまり、客の期待は「サイパン往復の飛行機と、泊まるホテルを決めてくれる」「1人5万で行ける団体旅行のプランを提示してくれる」こと。
ここで、「その時期のサイパンですと、このパックがお得です」とか「1人5万円ですと、こんなプランがあります」という提案をしたらダメです。
なぜなら、それは期待通りのことでしかないからです。
客が来たら、なぜなぜ分析をする
じゃあ、どうすればいいかというと、客がやってきたらしばらくは「なぜ?」と問い続けるんです。
なぜ来店したのかを聞けば、サイパンでダイビングなり、慰安旅行の話をするでしょう。
3時間で行けるから→なぜ3時間?→休みが4日しか取れないから
南の島に行きたいから→なぜ南?→暖かいところがいいから
定番の観光地だから→なぜ定番の場所?→英語話せないから
なぜダイビングなのか?→海がきれいと聞いたから/ライセンス安いから
旅の知識があって、南の島に詳しければ、実際はもっともっと細かくいろんなことを聞けますよね。
情報を総合して、客が気付いていない提案をする
来店時、客はサイパンのことしか頭にありません。
この時、実はあなたにはパラオに1週間滞在した経験があったとして、客から聞き出した情報を総合した結果、パラオ旅行でも成立するとしたら、それを伝えれば客は喜びますよね?
でも、まだ観光地としてはマイナーな場所なので、客としてはホテルや食事、言葉の問題などが不安になります。(これは「なぜサイパンなの?」を突き詰めていくと、聞き出せる情報です)
この時、あなたがパラオに行ったときの体験談を紹介しながら不安を解消することができれば最高です。
というのも、ダイビング好きの客ならパラオのことは多分知っているはずです。
しかし、予算や日程の制約、マイナーな場所による不安などにより、最初から諦めて、サイパンで妥協していたわけです。でも、あなたの話を聞いた結果、憧れのパラオに行ける気がしてきた。それって最高の気分だと思いませんか?
三流の担当者だと、客の言うとおりにサイパンのプランを提案して終わりですが、旅好きだからこそパラオでも行けることを説明できて、客も大満足するわけです。
最高の旅を考える作業は、あなたも楽しいはず
客の話を聞き出した後で、あなたが提案を組み立てている瞬間の作業というのは、旅のプランを考えることですよね?
これは、あなた自身が旅行するときにもやっているのと同じことです。
4日間という制約の中で最高のダイビングを楽しみたいとしたら、自分ならどこにどうやって行って、何をするかを考えているわけです。
旅のプランを考えている時って、すごくワクワクするじゃないですか?
もし、客の言うとおりサイパンのパックツアーのリストを出して、「どれがいいですか?」と聞くだけだったら、そのワクワク感は味わえないはずです。
あなたの体験談とオススメを提案することで、双方がハッピーになる
あなたの提案を聞いている時、客としてはパラオ旅行が成立しただけでも嬉しいのに、ガイドブックにも出ていないような情報をじゃんじゃん教えてくれることで大満足です。
あなたとしては客に説明しているだけのつもりでも、嬉しそうな客の顔を見ていると、自分も嬉しくなって「もっと教えてあげたい!」と感じる気がしませんか?
この時、確実にあなたは笑顔で楽しそうに説明しています。客もそんな笑顔のあなたの話を聞きながら、「この人は本当にパラオが楽しかったんだろうな~。自分もますます楽しみになってきた!」とテンションが上がっていくわけです。
お互いが笑顔でワクワクしながら旅行の話をしているなんて最高じゃないですか!
ここまで来れば、土産話なんて余裕で聞けます
えーと、ここまで説明した方法は、「土産話を聞く方法」だったこと、覚えてますか?(笑)
おさらい
- 客を通して間接的に旅の楽しさを感じるためには土産話を聞けばいい
- そのためには客を大満足させる必要がある
- それにはあなたの旅の知識を総動員して、客が考えてもいなかったピッタリの提案をしてあげる必要がある
- その提案をしていると、客もあなたもワクワクしちゃう
そう、土産話を聞くためだったのに、旅行プランを立てる部分まで疑似体験して楽しめちゃったんです。しかも客まで喜ばせながら。
旅行前にここまでお互いワクワクできる関係になっていれば、帰国後に電話したら絶対相手してくれますよね。
もしかすると、黙っていても客の方からメールや電話でお礼の連絡が来るかもしれません。
就活してると「『ありがとう』と言われてやりがいを感じる」みたいな話ばかり聞きますが、その本質はこういうことなんです。
正しい「提案型営業」の威力
今や「飛び込み営業」の隠れ蓑として使われがちな「提案型営業」という言葉ですが、本来はここまでに説明した超Win-Winな関係をもたらすものなんです。
こういう売り方をすると、客とあなたがハッピーなことはもちろん、ビジネスとして見ても素晴しい結果が待っています。
売上が増える(こともある)
今回の例だと、黙っていたらサイパンのパックツアーになっていたところが、もっと高価なパラオのツアーや、もしかするとカスタマイズされたもっと高いプランにできるかもしれません。
普通に考えたら、旅行代が上がるのはイヤなことで、高いプランをしつこく提案してくる担当者は嫌がられますが、今回の例のようなやり取りであれば、その心配もありません。
お互いハッピーなのに売上も増えるんですから、言うことなしです。
リピーターになったり、客を紹介されたりする
大満足した客だったら、次にどこか旅行に行くときも再びあなたの元に来てくれます。お店に来ても「◯◯さんお願いします」と指名されるでしょう。
客としては「パラオは本当に良いところだった。彼は他にも色んな所を旅した経験があるみたいだから、きっと次も素晴しい提案をしてくれるはずだ。」という風に、あなたのファンになってくれているわけです。
さらに、その客は友達にも土産話をしているはずです。
その中で、「あの店の◯◯さんは本当に良くしてくれるから、相談してみると良いよ」といった風に、新しい客を紹介してくれることだってあります。
そうして紹介された客にも親身になって対応していれば、その人も別の客を紹介してくれて、どんどん客がやってくるサイクルが完成します。
これって、実は「デキる営業マン」の仕組みです。
何かとネガティブイメージがある営業ですが、本来はこういう仕事なんですよ。
立ちはだかるノルマという壁をどう攻略するか
旅行業界で働いている方からすると、ここまでの話は「そんなの理想論だ!」と言いたくなる内容かも知れません。
僕は旅行業界ではありませんでしたが、趣味を活かして仕事をしていても、ノルマがイヤになって辞めたことがあるので、それはよく分かります。
とはいえ、旅行代理店の窓口であれば、基本的には来店した客に売る仕事なので「来店した=多少なりとも旅行に行く気がある」はずです。
そうであれば、前半に書いた「なぜなぜ分析」でニーズを探り出し、そこからあなたの知識や経験を元に、客の期待を超える提案をしてあげられれば問題ないでしょう。
売る商品が指定されると苦しい
しかし、売る商品が指定されていると苦しくなってきます。
具体的には、「お前が売るべきは、このサイパンのパックツアーなんだ!他のものはいいから、とにかくコレを売れ」というパターン。
これは「客を喜ばせる」というビジネスの大原則を無視していて、「会社が売りたいモノを売りつける」という発想なので上手くいくはずがないんですけど、現実にはこういう会社がたくさんあります。
僕もこれが耐えられなくて辞めた経験があるので偉そうなことは言えませんが、ちょっと考えてみましょう。
あなたなりの付加価値を付ける
サイパンのパックツアーしか売るなと言われたら、パラオの提案はできません。
なので、パラオに行きたい人でも、フィジーに行きたい人でも、なぜなぜ分析で少し探りを入れたところで、サイパンに誘導することを試みます。
その上で、あなたが持っているサイパンに関する知識を総動員して、日本人にはまだ知られていないアクティビティの情報とか、地元の人しかいない穴場ビーチの情報とか、そういった話を織り交ぜて客の信頼を得ていきます。
客と商品のアンマッチが明らかなら諦める
でも、ダイビングに詳しい人だったら「どう考えてもパラオの方が綺麗で、サイパンには興味ないんだよ」と言ってくると思います。
こういう客に対して、それ以上サイパンの話をするのは避けるべきです。
押し売りと感じられる前に、素晴しいパラオ旅行のプランを考えて楽しみましょう。(あなたがサイパンのメチャクチャ綺麗なダイビングスポットを知っていて、パラオより上だと伝えられれば別ですが)
この客を使ってノルマを達成するのは諦めることになりますが、仕方ありません。その客の友達がサイパンに興味を持っていて、いつか紹介してくれることを祈りましょう。
ここでなんとかサイパンのパックツアーを売りつけようとしても、もうその客は話を聞くのが嫌になって帰ってしまいますし、友達に紹介することもありません。
こういう営業を強いられると、お互い嫌な気分になる負のスパイラルに陥ります。
これをむりやり続けていると、旅が嫌いになってしまうリスクすらあります。上司に「なぜサイパンツアーに固執しないといけないのか?」「他のものなら気持ち良く売れるんです!」といった話をしましょう。
これが聞き入れられないような会社・部署に未来は無いので、転職や独立を意識しながら、スキルを磨くためと割り切って会社を利用するしかありません。
現地に行かないと絶対に満足できないというあなたには
ここまでの話は、客を通じて間接的に旅を楽しめることを前提にしていました。
しかし、とにかく現地に行って五感で感じたり、現地の人との交流を直接楽しめないと、旅として楽しめないという人もいると思います。
ですが、運良くそういう会社や部署に就職できていない限り、なかなか難しいところでしょう。
添乗員では客の面倒を見るのに忙殺されてとても楽しんでいられないと聞きますし、新たなツアー先の開拓といった仕事もどこかにあるとは思いますが、新入社員がいきなりできる仕事では無いと思います。
じゃあどうすればいいかというと、独立してそういう仕事をするか、社内のそういう部署に配属されるための修行として現在の仕事を受け入れるか、そのどちらかしかありません。
ろくなアドバイスになってませんけど、あなたが感じている旅の素晴らしさを客に伝えて、客にもその素晴らしさを共感してもらい、そこに喜びを感じられるようになることが最善の策だと思います。
まとめ
いやー、だいぶ長くなってしまいました^^;
まとめると、こんな感じです。
旅に出られないなら、客を通じて旅の疑似体験をして楽しむ
- 客が喜んで土産話をしてもらえる関係を構築する。
- 客の期待を大きく上回る提案をして、大満足の旅にする
- 旅の経験・知識を総動員して、最高のプランを一緒に考える
これを実践すると、こんな効果があります。
- あなたは旅行プラン立案や土産話で旅を疑似体験できる
- 客は素晴しい提案をしてもらえて大満足
- 満足した客がリピーターになったり、別の人を紹介してくれる
- 会社の売上アップにも貢献できる
ノルマとの付き合い方
- いつも最高のプランを提案していれば、客はやってくるから大丈夫
- 商品が指定されているときは、その範囲内で自分の知識・経験を総動員して付加価値をつける
- 客が欲しがらない商品を押し売りしなきゃいけない仕事が続く時は、独立・転職を意識し始める
仕事をしてお金をもらう以上、就職する限りは長期休暇をある程度諦めるしかありません。
でも、たとえ独立しても悠々と旅行できるような日はしばらく来ませんから、まずは趣味を仕事にして楽しみながら経験とお金を貯めましょう。
ある程度仕事の良いところ・悪いところを把握できたところで、それでも長期休暇を取って旅をできる環境が欲しいと思ったら、その時にまた生き方を考えるのが良いと思いますよ♪